9月18日 春のギフ、初夏のヒメヒカゲに続いて三たび播磨を訪れる。今回の主目的はツマグロキチョウ、といっても播磨では生息はしているものの確実に出会えるポイントは無い。したがって但馬の高原まで案内いただく。午前10時すぎ高原に到着し、すぐにツマグロキチョウに会うことができた。カワラケツメイの群落があるところを飛んでいる小さめの黄色い蝶はほとんどが本種と思われる。夏型と秋型が混飛しているが、まだ夏型のほうが多いようだ。夏型と秋型が交尾しているのを発見いただき撮影する。「えらいせんどぶりやの、どないしとったんど」(訳:随分と久しぶりだね、どうしてたの?)そんな播州弁が頭に浮かぶ。古い幼馴染に出会ったような嬉しさを覚える。蝶の採集に夢中だった中学生の頃から、探して見つかるわけでもなく、かといって全くいないわけでもなく、思いがけずにふらっと姿を見せるこの蝶に魅かれていた気がする。ひなびた単線である加古川線の線路沿いで見かけることが多かったが、線路からは随分離れた我が家の庭にも突然ひょっこり姿をみせたり不思議な蝶であった。そんな風来坊のようなこの蝶が減少の一途をたどり、絶滅の危機に瀕している地区も少なくない。関西では大阪・京都・滋賀、関東では神奈川・東京・千葉から姿を消している。河川環境の変化に伴うカワラケツメイの減少が主な原因だといわれている。セイタカアワダチソウなどの外来種の攻勢を受けてカワラケツメイは姿を消している。しかし、東海地方では逆に外来種のアレチケツメイを食草に造成地などで多く見られるという。生命のたくましさも感じるが、この蝶の将来を思うと寂しい限りである。直角にとがった前翅先端と和紙の味わいの翅裏を持つこの風来坊が、「いきがけにちょこっと寄っただけ」とふらっと姿を見せ続けてくれることを望んでやまない。 (各画像はクリックすると拡大表示します)
ツマグロキチョウ 吸蜜する夏型、キタキチョウと紛らわしいが練れてくると飛んでいてもわかる。↓
ツマグロキチョウ 夏型、カワラケツメイの群落を低く♀を探して飛び回る個体が多かった。↓
ツマグロキチョウ 最初に見つけた秋型、羽化直後なのかきわめて新鮮。↓
ツマグロキチョウ クズの葉に止まる秋型、見掛けた秋型は不活発な個体が多かった。↓
ツマグロキチョウ 交尾する夏型(右)と秋型(左)、両型が混飛するこの季節ならではの風景だろう。↓
キタキチョウ ツマグロキチョウとの違いは明らか。↓