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ぶらり探蝶記

秋風吹く山村~限界集落と蝶~

9月23日 今年4度目の播磨探蝶である。早朝、大阪から播磨に向う時はまたしても雨。西に向うにつれて明るくなってくるのは今回も同じ。しかし雲は厚く、蝶の飛ぶ気配はない。仕方なく、真紅のヒガンバナと黄金の稲穂が輝く秋の里山の景色を堪能しながら、ゆっくりと北播磨へと車を走らせる。どんどん空は明るくなり、クロツバメシジミのいる山里に着く頃には、やわらかな秋の日差しがさして来た。クロツはチラホラ飛んでいる。夢中で撮影していると、お婆さんが、ヒイヒイ息を切らしながら上がってきた。どうやら生息地脇のあばら家(失礼)で一人暮らしのようだ。ここで交わした会話はこうであった。お婆さん(以下O)、temenos(以下T)
O「ちょうこ(蝶のこと)かい?」 T「うん、珍しい種類がおるからね」 O「あんたらが言うから、これ(ツメレンゲ)抜かんと残しといたから」 T「ありがとうね、お婆ちゃん、この蝶だいぶ減ってきとんねん」 O「はぁ?ワシ耳つんぼ(不適切な言葉だが、実際の会話のまま)でよう聞こえん」 ??今までしゃべっていたではないか? T大きな声で「この蝶、珍しい種類やねん!」 O「ほうけ!どこにおるんや」 T蝶を指差し「この小さいやつ」 O「ほう、これけ。大きなるんか?」 どうやら成虫になっても大きくなると思っているらしい。 T「これで親や、これ以上大きくならんよ」 O「家の脇の石垣にもようけこれが生えてきたから見に来い」 といって無理やり案内してくれた。ツメレンゲがたくさん生えていたが、日当たりが悪くクロツはいない。 O「ほら、ここも、ここも、ここにも生えとる、けどちょうこ、おらんの」と寂しげに言う。 T「お婆ちゃん、飛んでくるから心配いらん」 など、蝶やツメレンゲのことから始まり、玄関で転んで腰を痛めた話など終わりそうもない。人恋しくて仕方が無いのであろう。 T「お婆ちゃん、草守ってくれてありがとね、けどもう行かなあかん」というと、瞬間顔が曇ったが、すぐに一本しかない歯を見せて人懐こく笑いながら「また、来てな」と家に入っていった。ほのぼのとした会話なのだが、お婆ちゃんの家を訪ねたわけではないのだ。限界集落へと向う山村の現状を垣間見て、胸が締め付けられる思いで現地を後にした。山里の素晴らしい景色は、昨年と寸分たりとも変わっていない。連綿と続いてきた、この日本の原風景を残していくことが出来るのだろうか。 (各画像はクリックすると拡大表示します)


クロツバメシジミ  ツメレンゲの生える石垣で日光浴する。↓
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クロツバメシジミ  羽化間も無いと思われる新鮮な個体。↓
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クロツバメシジミ  上記個体を接写する。↓
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ハンミョウ  クロツの飛ぶ石垣の下の地面ですばやく飛び回る。↓
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ツバメシジミ  東播磨の里山で。萩の周辺を多くの本種が飛び交っていた。↓
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ツバメシジミ  開翅する矮小な♂。写真では大きさは伝わらない。↓
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ウラギンスジヒョウモン  稲刈りの始まった水田を見下ろしながら、ヒヨドリバナで吸蜜する。↓
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ウラギンスジヒョウモン  アザミで吸密する。この個体は破損も少なくきれいだ。↓
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キタキチョウ  これも秋になると数多くなる。この場所にはカワラケツメイもあるので、もしやと思ったが・・・。↓
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ルリシジミ  萩の蕾に産卵する。↓
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イチモンジセセリ  秋になると大きく数を増やす蝶の代表種。↓
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チャバネセセリ  播磨ではイチモンジセセリと互角の数である。↓
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by temenos | 2012-09-24 00:01 | 2012年 | Comments(6)
Commented by ごま at 2012-09-24 07:40 x
お婆さんとのやり取り、いいですね。
その場の情景が浮かんできます(^_^)
ツメレンゲを残してくれているとは有難いです。
クロツは何処でも心配ですね。
Commented by himeoo27 at 2012-09-24 19:25
クロツバメシジミの裏翅良いですね!
群馬県の産地に来月でも出かけてみようかな?
Commented by Akakokko at 2012-09-26 23:00 x
なんともほのぼのとさせられる会話ですね。
会話だけで、回りの景色も目に浮かぶようです。
田舎は老齢化が進んでますよね。
このおばあちゃんが亡くなるとツメレンゲはどうなるんだろう、なんて考えてしまいます。
Commented by temenos at 2012-10-04 15:57
ごまさん、ひなびた山里での穏やかな時間でした。
クロツ、いつまでも飛び続けて欲しいですね。
Commented by temenos at 2012-10-04 17:24
himeooさん、クロツは大好きな蝶のひとつなのです。
この可愛いヤツには定期的に会いたくなります。
Commented by temenos at 2012-10-04 17:26
Akakokkoさん、長閑な風景に舞うクロツと
その食草を大切にしてくれるおばあちゃん、
そんな光景はいつまでも残って欲しいですね。